健康増進法

前身は「栄養改善法」と言い、戦後に作られた法律でしたが、2003年、今の時代に合わせるために、国民の健康の増進と総合的な推進に関し基本的な事項を定め、国民の栄養の改善、その他国民の健康維持、増進を図るために措置を講じ、国民健康の向上を図ることを目的に制定された法律です。

その後、健康食品などの虚偽誇大広告を禁止などについても施行されています。

健康増進法と健康食品

健康増進法の目的


全国民の健康推進と向上に関して、基本的な事項を設けることによって規制等を行使し、逸脱した表現やサービスの提供、健康に著しく害を与える恐れのある製品の流通を抑止する事にあります。

健康食品との関連


「健康増進法」において健康食品は、主に以下の内容で関わっていきます。

栄養表示の義務と基準

≪第三十一条≫

 

流通販売対象の製品が諸外国より輸入されており、且つ栄養素及び原材料が表示されていない製品を取り扱う者は、厚生労働大臣が定める栄養表示基準に則り手続きを行い、また、必要な表示をしなければなりません。

但し、梱包容器またはこれに付随する文書以外の方法で栄養素を表示する場合、またはその他政令にて定められている場合は、この限りではありません。

 

虚偽・誇大・誤認される表示の禁止

≪第三十二条の二≫ 

何人も、理由を問わず「食品」として販売流通させる商品に関して、広告またはチラシ、そのた販促媒体に掲載する場合は、消費者の健康保持または促進に関して厚生労働省が定める事項(健康保持増進効果等)を逸脱した表現、事実と異なる内容、誤認される恐れがある表現は使用することはできません。また、これに付随する文言についても掲載できません。

 

特別用途表示の認可・許可

≪第二十六条≫ 

乳児用・幼児用・妊産婦用・病者用・その他厚生労働省が定める用途対象者を限定しその旨を表示する場合は、対象商品毎に厚生労働大臣より許可または認可を受けなければなりません。

 

特定保健用食品としての許可

【第26条の第1項が定める許可】又は【第29条第1項が定める承認】を受け、対象商品を摂取することによって期待できる、当該保健の目的または健康増進についてその旨を、法律の範囲内に限り表示することが出来ます。

 

健康増進法一部改定の意義

あくまでも食品として販売流通させる製品について、健康の保持や増進が証明されていないにも関わらず、効能効果を期待または標榜、暗示させるような誇大広告が多々見受けられます。

また、一部表示内容で長期利用を推奨する製品が確認されています。

これによって消費者は、適切な治療を受ける機会を失っていることが問題となっています。

よって国民の健康維持と増進の観点から重大な支障が生じると判断し、法律の改定を行ったものであります。

 

改定の詳細

事実に反する誇大広告を作成または表示した者に対し、適切な表示への変更または修正を行う事を勧告します。

それに従わない者に対しては、再勧告と共に対象者の意思に関わらず必要な措置を講じることが出来るものとし、違反した者に対して処罰を科すと改定されました。

 

健康増進法第32条の2の規制・処罰を受ける対象者範囲

誇大・虚偽等の広告を使用した者は処罰の対象になりますが、当条は、「何人も」と規定しています。つまりは、広告作成に関係したすべての者、及び製造元販売元など分け隔てなく処罰の対象にするとしています。これは個人法人等についても区別されませんので注意が必要です。

 

食安基発第0829001 号 食安監発第 0829005 号  (平成15 年8 月29 日)


食品として販売流通させる商品に関して規制する「健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告の禁止並びに広告等適正化のための監視指導等に関する指針」(ガイドライン)では、留意事項について以下のように記載しています。

 

1 広告依頼者と第一義的責任

広告依頼者が広告の作成及び掲載の依頼をし、販促活動その他付随する行為によって利益を得られた、該当の製造業者及び販売業者(以降広告依頼者)は、健康増進法第32条の2の規制適用対象者となります。

 

 2広告依頼者と作成者の適用範囲

これに対して、広告依頼者から掲載を依頼され、該当商品の広告及び附随する表示の、新聞、雑誌、テレビ、出版等に係るすべての者は、広告依頼者による責任の下で作成された各種広告媒体を掲載放映するものであり、直ちに同条の適用者とはなりません。

ただし、作成した広告媒体の内容が誇大広告または虚偽広告であると容易に予見できると判断された場合は、広告依頼者と同様とみなされ処罰が科せられる場合があります。

 

広告と判断されるものとは


  1. 顧客を誘引し、製品購入機会を提供する意図が明確である事。
  2. 対象商品のブランド名(商品名)、製品の特長が明確である事。
  3. 消費者が対象品を安易に認知判別できる状態である事。

現行の薬事法などを取り巻く現状から、故意に広告規制の対象外にする行為が見受けられており、また、上記の1~3に該当しないよう回避行為を行う悪質な販売業者が確認されており、消費者保護の観点から逸脱した行為である事は残念でなりません。

しかしながら、

  • 「広告ではない」「勧誘目的ではない」「商品名や価格は掲載していない」「成分と商品名は関係ない」など、広告媒体の規制対象外である旨をアピールしている一方で、商品名と効能効果を同時に掲載し、容易に判別できる状態にしている。
  • 商品名の偽装、使用画像の加工、文言の一部を伏せるなどして規制の対象から外す行為をしているが、商品の認知具合や文言、使用画像から商品を特定できる状態である。
  • 特定の食品または成分に関して健康維持または増進を期待できる旨を紹介した書籍や雑誌、冊子類を出版し、ホームページ等で公開しているが、一部に販売元への連絡先等が掲載されており、また、リンクが設けられている場合は、実質消費者を誘引する「広告」として判断されます。

健康保持と増進効果等の表示に該当する表現例


1 健康の保持増進の効果

特定疾患の治療または予防を目的とする効果の表現例

「糖尿病・高血圧・動脈硬化でお困りの方に」

「末期がんに効果があり治る」「虫歯を防げる」

「肥満を解消できる」「エボラ出血熱・SARSなどを予防できる」など… 

 

身体組織機能を増強し、増進を目的とする効能効果

「肉体疲労の回復」「滋養強壮」「体力強化」

「食欲の増進」「老化を防止する」など…

 

特定の保健使用に対して適当である旨の効能効果

「こちらの製品はお腹の調子を整える○○配合です」

「血圧が高めの方に嬉しい成分が配合されています」など…

 

配合している栄養素の効能効果

「カルシウムは、骨や歯の形成と維持に必要な栄養成分です」など…

 

2 厚生労働省が定めている事項一覧

対象製品に含有する食品及び成分量

「一製品に大豆が〇〇g相当含まれています」

「カキ殻由来のカルシウムを〇〇㎎配合しています」など…

 

特定の食品または成分を抽出または含有

「プロポリス含有食品」

「〇〇から抽出した成分を配合しています」

 

カロリー摂取量に関する表示

「カロリーオフ」または「エネルギー0カロリー!」など…

 

身体の美化、魅力向上、見栄えの変化、皮膚頭髪を健やかに保つ効能効果

「皮膚に潤いをあたえます」

「髪の毛にハリとコシを与えます」

「憧れの美しい体形へ…」など…

 

 

3 間接的に健康の保持や増進を表示させる場合

文言やタイトル・キャッチフレーズを使用した表示

「パーフェクダイエット以下製品名」「製品名ダイエットが効果テキメン」

「〇〇ガン、糖尿、肝臓病以下製品名」など…

 

含有されている成分の表示と説明により掲載するもの

「ダイエット業界が注目の新成分○○を○○㎎配合しました」など…

 

起源、由来を引用して説明をする場合

「古来の書物でも○○という成分は〇〇病を予防していたと伝えられており、祖先からの知恵は今の食文化に根付いています」など…

 

新聞雑誌の記事、医者や研究者発表の学説、体験談などを引用して掲載

「製品名を毎晩毎日続けいたら、とても楽になりました」など…

 

医療機関や行政機関管轄の保健施設から認証を受けている旨を表示

「〇〇法人○○局認証食品」「〇〇研究所共同開発推奨品」など…

 

 

健康増進法 第32条2に抵触する判断基準

健康増進法の規制において、実際とは異なる文言の使用、または誤認を誘発させる恐れがある表現例は以下の通りです。

  • 各種医療機関及び法人、大学付属の研究機関、行政直轄で運営管理する保健機関等による推薦や承認を得ている旨を掲載しても、推薦や承認そのものを証明する制度が存在しない場合や、制度が実在している場合でも、制度を制定している団体の意図とは異なる方法に使用し、あたかも健康の保持増進に関して認証を受けていると誤認されかねない場合。
  • 消費者に対しての広告掲載について、医師または歯科医の診断や治療を受けなければ完治が望めない特定の疾患にも拘らず、対象商品を使用する事で軽減または完治出来るかのような表現を掲示し暗示した場合。
  • 第三者の証言や古来からの言い伝えなどを引用し、健康保持や増進、効能効果を期待できる可能性を表示又は暗示させた場合。

 

健康増進法違反の定義

ホームページや書籍でも下記のような場合、広告とみなされ法が適用されます。


【例】ホームページ

食品の健康保持増進効果等を記載したページからの特定食品の販売ページにアクセスできるようにリンクが貼られている。

【規定の適用を受ける対象】リンク設定を要請した食品業者及びホームページ運営者

 

【例】書籍(バイブル本)

がん等の重篤疾病が食品を摂取することで自己治癒できるかのような誇大広告を行う書籍であって、その中に連絡先を記載することで、読者を健康食品の販売に導くもの(連絡先を末巻に表示する場合のみならず、しおり状の紙片に表示し挟み込む場合も含む。)

【規制の適用を受ける対象】書籍を共同で出版した出版社及び食品販売業者

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食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)について
【薬食発第0829007 号】
Guideline 1.pdf
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体外排出によるダイエットを謳う食品に関する広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)について
【食安新発第1208001 号】
Guideline 2.pdf
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食品として販売に供する物に関して行う健康保持増進効果等に
関する虚偽誇大広告等の禁止及び広告等適正化のための監視指導等に関する指針(ガイドライン)に係る留意事項について
【食安基発第0829001 号及び食安監発第 0829005 号】
Guideline 3.pdf
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